おひとりさまの終活で最初にやるべきことは、「どこに何があるか」を一覧にまとめ、それを託せる相手を決めることです。頼れる家族が近くにいない場合、もしもの時にあなたの情報を代わりに探してくれる人はいません。だからこそ、元気なうちに「情報を渡せる形」にしておくことが、何よりの備えになります。

この記事では、おひとりさまの終活でやることを6つに整理し、「頼る先」の作り方と最初の一歩まで、順を追って解説します。

おひとりさまの終活が「特に大切」な理由

家族と同居している人の終活は、「家族の負担を減らす」ための準備です。一方、おひとりさまの終活は少し性質が違います。死後の手続きや入院時の対応を、当然のように代わってくれる人がいない前提で考える必要があるからです。

たとえば、次のようなことは誰かがやらなければ進みません。

  • 入院時の身元保証や、医療方針についての意思確認
  • 亡くなった後の葬儀・火葬・納骨の手配
  • 部屋の片付け、賃貸契約や公共料金の解約
  • 銀行口座・サブスク・携帯電話などの契約の整理

疎遠な親族に突然これらの負担がかかったり、財産の所在が分からないまま口座が放置されたりするケースは珍しくありません。

裏を返せば、元気なうちに準備しておけば、これらの多くは自分で決めておけるということです。判断能力があるうちにしか結べない契約もあるため、「まだ早い」と感じる今こそが、実は一番動きやすいタイミングです。

おひとりさまの終活でやることリスト【6つ】

やることを優先度の高い順に6つ挙げます。すべてを一度にやる必要はありません。①から順に、できるところから進めましょう。

① 財産・契約・デジタル情報の一覧化(最優先)

最初にやるべきは、「どこに何があるか」の一覧を作ることです。どんな制度や契約を利用するにしても、あなたの財産や契約の全体像が分からなければ、誰も動けないからです。

一覧に書き出す項目の例は次のとおりです。

  • 銀行口座・証券口座: 金融機関名・支店名(残高の詳細までは不要)
  • クレジットカード: カード会社名・引き落とし口座
  • 保険・年金: 保険会社名・証券の保管場所・年金の種類
  • 不動産・車: 所在と権利証などの保管場所
  • サブスク・定期契約: サービス名・課金経路・解約方法
  • デジタル情報: スマホやPCを開ける手段の所在、主要アカウント(Apple ID・Googleなど)の存在

注意点はひとつ。暗証番号やパスワードそのものは書かないことです。書くのはあくまで「所在」だけ。一覧は金庫ではなく「地図」に徹することで、紛失や盗難のリスクを避けられます。

書き出す項目の詳しい例やまとめ方は、財産目録の作り方の記事で解説しています。

② 緊急連絡先・専門家(士業)の確保

一覧ができたら、次は「もしもの時に連絡がつく人」を決めておきます。

  • 緊急連絡先リスト: 親族・友人・かかりつけ医・大家さんや管理会社など、連絡してほしい相手の名前と連絡先を書き出す
  • 専門家との接点: 弁護士・司法書士・行政書士など、終活の相談に乗ってくれる専門家を一度探しておく

「頼れる親族がいない」という方も、自治体の高齢者福祉窓口や地域包括支援センター、各地の弁護士会・司法書士会の相談窓口など、公的な入口は複数あります。まずは無料相談を一度使ってみるだけでも、「いざという時にどこへ行けばいいか」が分かり、不安がぐっと軽くなります。

③ 医療・介護の希望と、判断を託す相手(任意後見・見守り契約)

病気やけがで自分の意思を伝えられなくなった時に備えて、次の2つを準備します。

  • 医療・介護の希望を書き出す: 延命治療の希望、介護が必要になった時にどう暮らしたいか、などをノートに残す
  • 判断を託す仕組みを検討する: 一般的には、判断能力が低下した場合に備えて後見人をあらかじめ決めておく「任意後見契約」や、定期的に安否や生活状況を確認してもらう「見守り契約」といった制度があります

これらは公正証書の作成が必要になるなど手続きに専門性があるため、概要を知ったうえで、弁護士や司法書士などの専門家に相談しながら進めるのが安心です。

④ 死後事務委任契約の検討

「自分が亡くなった後の手続きを、誰がやってくれるのか」——おひとりさまの終活で最も大きな不安が、この点だと思います。

一般的には、死後事務委任契約という、亡くなった後の葬儀・火葬・納骨、行政への届出、部屋の片付け、契約の解約などの事務を、生前に信頼できる相手(専門家や法人など)に依頼しておく契約があります。遺言書が主に「財産を誰に渡すか」を定めるのに対し、死後事務委任契約は「手続きを誰がやるか」を決めておくもの、と整理すると分かりやすいでしょう。

費用や依頼できる範囲は依頼先によって異なります。契約内容の設計には法律的な判断が関わるため、こちらも弁護士・司法書士等への相談をおすすめします。

⑤ 葬儀・お墓・遺品の希望

「どんな葬儀にしたいか」「お墓はどうするか」「遺品はどう処分してほしいか」を書き残しておくと、手続きを引き受けてくれる人が迷わずに済みます。

  • 葬儀の形式(家族葬・直葬など)や予算の目安
  • お墓の希望(既にあるお墓、永代供養、樹木葬、散骨など)
  • 残したい物・処分してよい物の区別、ペットの引き取り先

完璧に決める必要はありません。「これだけは」という希望から書けば十分です。

⑥ 遺言書の作成

財産を渡したい相手がいる場合は、遺言書の作成を検討しましょう。一般的には、法定相続人がいない場合、遺言書がなければ財産は最終的に国庫に帰属します。お世話になった人や友人、支援したい団体に財産を残したいなら、遺言書が必要です。

自筆証書遺言を法務局で保管してもらう制度や、公証役場で作成する公正証書遺言などの方式がありますが、書き方に不備があると無効になる恐れもあるため、作成時は専門家に相談すると確実です。

「頼る先」をどう作るか

おひとりさまの終活は、「全部ひとりで抱える」ものではありません。頼る先の選択肢を知っておくだけでも、準備はずっと現実的になります。

  • 親族・友人: 疎遠でも、緊急連絡先や情報の預け先としてお願いできる場合があります。まずは率直に話してみるのがはじめの一歩です
  • 専門家(弁護士・司法書士・行政書士): 任意後見・死後事務委任・遺言書など、契約が関わる部分の相談先
  • 自治体・地域包括支援センター: 高齢期の生活相談の公的な窓口。終活支援事業を行う自治体もあります
  • 社会福祉協議会・民間サービス: 見守りや身元保証などのサービスを提供している場合があります(内容と費用は事前によく確認を)

そして大切なのは、誰に頼る場合でも**「情報を渡せる形」にしておくこと**です。①で作った一覧があれば、託された側は迷わず動けます。逆に一覧がなければ、どんなに良い契約を結んでも、実務は手探りになってしまいます。

おひとりさまが最初にやるべきこと

やることが多く感じられたかもしれませんが、最初の一歩はシンプルです。

  1. 「どこに何があるか」の一覧を作る(銀行・カード・保険・サブスク・デジタル情報の所在)
  2. 一覧の保管場所を、託せる相手に伝える(親族・友人・専門家など、まずひとりで十分です)

この2つだけで、「もしもの時に誰にも何も分からない」という最大のリスクは大きく減らせます。紙に書く、表計算ソフトにまとめる、無料の整理ツールを使うなど、方法は続けやすいもので構いません。終活全体の進め方は終活の始め方の記事も参考にしてください。

注意点

最後に、2つだけ注意点をお伝えします。

  • 契約は元気なうちに: 任意後見契約や死後事務委任契約などは、一般的には判断能力があるうちにしか結べません。「必要になってから」では間に合わない可能性があるため、検討は早めに始めましょう
  • 定期的に見直す: 口座や契約、連絡先は年々変わります。年に1回、誕生日や年末など決まったタイミングで一覧を見直す習慣をつけると、情報が古くならずに済みます

おひとりさまの終活は、不安をなくすためというより、「この先を安心して自分らしく暮らすため」の準備です。今日、口座とカードを書き出すことから始めてみてください。それだけで、備えは確実に一歩進みます。