エンディングノートの書き方に決まった形式はなく、「自分のこと」「資産・契約のこと」「医療・葬儀の希望」「家族へのメッセージ」を書きやすい項目から自由に書いて構いません。この記事では、何を書けばいいか迷わないための内容の項目一覧と、途中で手が止まらない書き進め方のコツを、順を追って解説します。

エンディングノートとは?遺言書との違い

エンディングノートとは、もしもの時(死亡だけでなく、入院や認知症などで自分の意思を伝えられなくなった時も含みます)に備えて、自分に関する情報や希望を家族に伝えるためのノートです。「終活ノート」と呼ばれることもあります。

最初に押さえておきたいのは、エンディングノートには一般的に法的効力がないという点です。これは欠点ではなく、むしろ「書式も内容も自由」「何度でも書き直せる」「気軽に始められる」という利点につながります。

比較項目 エンディングノート 遺言書
法的効力 なし(希望や情報の伝達) あり(相続分の指定など)
書式のルール 自由 民法で厳格に規定
書ける内容 資産の所在、医療・介護・葬儀の希望、メッセージなど何でも 主に財産の分け方・相続に関する事項
書き直し いつでも自由 可能だが方式に従う必要あり
費用 ほぼ不要(ノート代程度) 公正証書遺言は数万円〜の費用が目安
効力を発揮する場面 生前(入院・介護時)から死後まで幅広く 死後の相続手続き

つまり、「財産を誰にどう分けるか」を法的に確定させたい場合は遺言書が必要で、エンディングノートはその代わりにはなりません。相続の分け方に希望がある方は、一般的には遺言書の作成をあわせて検討し、具体的な進め方は弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

一方で、「どこに何があるか」「どうしてほしいか」を家族に伝える役割は、遺言書よりエンディングノートのほうが向いています。両者は対立するものではなく、役割の違う補完関係と考えるとすっきりします。

エンディングノートに書く内容【項目一覧】

「何を書くか」で迷ったら、次の6つのカテゴリで考えると漏れなく整理できます。すべて埋める必要はありません。一覧を眺めて、書けそうなところに印をつけるところから始めましょう。

自分自身のこと(基本情報・経歴・思い出)

  • 氏名・生年月日・本籍地・血液型
  • 運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなどの保管場所
  • 学歴・職歴・住んだ土地などの簡単な経歴
  • 好きなもの、大切にしてきたこと、思い出

基本情報は各種手続きで、経歴や思い出は葬儀の際や家族が故人を偲ぶときに役立ちます。いちばん書きやすいパートなので、最初のウォーミングアップに最適です。

資産・契約のこと(銀行・カード・保険・年金・サブスク・不動産)

**家族にとって最も実用的なのがこのパートです。**もしもの時、家族は「どこに口座があるのか」「どんな契約が残っているのか」が分からず、手続きに何か月も費やすケースが少なくありません。

  • 銀行口座(金融機関名・支店名。残高の詳細は書かなくてもよい)
  • クレジットカード(カード会社名・引き落とし口座)
  • 保険(保険会社名・保険の種類・証券の保管場所)
  • 年金(基礎年金番号の書類の保管場所、企業年金・個人年金の有無)
  • サブスク・定期課金(サービス名・月額・課金経路)
  • 不動産(所在地・権利証の保管場所)
  • 借入・ローン(借入先・完済予定)

ここで大切なのは、金額を正確に書くことより「どこに何があるか」の所在を押さえることです。財産の一覧を体系的に作りたい方は、財産目録の作り方の記事でプラスの財産・マイナスの財産の書き出し方を詳しく解説しています。

デジタル・アカウントのこと(端末・ID・引き継ぎ手段の所在)

見落とされがちですが、現代の終活では欠かせない項目です。

  • スマホ・パソコンなどの端末と、ロックを解除する手段の「所在」
  • 主要アカウント(Apple ID・Googleアカウントなど)の存在とID
  • ネット銀行・ネット証券・電子マネー・ポイントの利用有無
  • SNS・メール・ブログの扱いの希望(削除してほしい、残してほしい等)

注意点として、パスワードそのものをノートに書くのは避けましょう(理由は後述します)。デジタル情報の安全な残し方はデジタル終活の記事で詳しく紹介しています。

医療・介護の希望

  • かかりつけ医・持病・服用中の薬・アレルギー
  • 延命治療についての考え方
  • 介護が必要になったときの希望(在宅か施設か、費用に充てられる資産)
  • 判断を委ねたい人

意思を伝えられなくなったとき、家族が重い決断を一人で抱え込まずに済むよう、現時点の考えを書いておきます。考えが変わったら書き直して構いません。

葬儀・お墓の希望

  • 葬儀の規模(家族葬・一般葬など)や宗教・宗派
  • 遺影に使ってほしい写真の保管場所
  • 訃報を知らせてほしい人の連絡先リスト
  • お墓の場所、または希望(納骨堂・樹木葬・散骨など)

「希望がない」ことも立派な情報です。「家族に任せる」と一言書いてあるだけで、遺された側の迷いは大きく減ります。

家族・大切な人へのメッセージ

普段は照れくさくて言えない感謝の言葉や、伝えておきたいことを書きます。最後に回して構いませんし、書かなくても構いません。ただ、多くの家族にとって、ここがいちばんの宝物になります。

エンディングノートの書き方【手が止まらない進め方】

エンディングノートは「買ったけれど白紙のまま」になりがちです。挫折しないための進め方を4つ紹介します。

① 書きやすい項目から埋める

1ページ目から順番に書く必要はありません。自分の基本情報や好きなものなど、考えずに書ける項目から埋めて、「書けた」という実感を先に作りましょう。重い項目(延命治療など)は後回しで大丈夫です。

② 「どこに何があるか」を優先する

時間が限られているなら、資産・契約・デジタルの「所在情報」を最優先で書いてください。メッセージや思い出は後からいつでも書けますが、口座や契約の所在は本人しか分からないことが多く、家族が最も困る部分だからです。

③ 完璧を目指さず、まず下書きを作る

「正確に書かなければ」と思うと手が止まります。まずは鉛筆書きやメモアプリで下書きのつもりで書き、分からない項目は空欄のまま次へ進みましょう。7割埋まったノートは、白紙のノートの何倍も家族の役に立ちます。

④ 定期的に見直す

口座や契約、考え方は変わっていくものです。誕生日や年末など、年に1回の見直しタイミングを決めておきましょう。書いた日付を各ページに入れておくと、どの情報が新しいか家族にも分かります。

エンディングノートを書くときの注意点

パスワード等をそのまま書かない

暗証番号・パスワード・マイナンバーなどの秘匿情報は、ノートに直接書かないのが原則です。ノートは金庫で保管するとは限らず、紛失や盗み見のリスクがあるためです。書くのは「どの銀行に口座があるか」「パスワードの控えはどこにあるか」という所在の情報までにとどめ、ノートを「情報の地図」として使いましょう。

保管場所と家族への共有

どれだけ丁寧に書いても、存在を誰も知らなければ役に立ちません。

  • 保管場所は「自宅の分かりやすい場所」(仏壇の引き出し、書類棚など)が一般的です
  • 信頼できる家族に「エンディングノートがある場所」だけは口頭で伝えておきます
  • 中身を今すぐ見せる必要はありません。「ここにあるからね」で十分です

無料で使えるエンディングノートの選択肢

エンディングノートは高価なものを買う必要はありません。主な選択肢は次の3つです。

  • 市販のノート(書店・文具店で1,000〜2,000円程度): 項目が印刷済みで、順に埋めるだけ。手書き派の方に向いています。
  • 自治体の配布ノート: 多くの市区町村が無料で配布しています。お住まいの自治体名と「エンディングノート」で検索してみてください。
  • アプリ・Webツール: 修正や更新がしやすいのが利点です。資産・契約の一覧づくりには、当サイトの「暮らしの台帳」のように、入力した内容を印刷して紙で残せる無料ツールを使う方法もあります。

どれを選んでも、書く内容はこの記事の項目一覧と同じです。大切なのは形式ではなく、「書き始めること」と「家族が見つけられる状態にしておくこと」。まずは今日、いちばん書きやすい項目をひとつだけ埋めてみてください。